2018年8月26日日曜日

V. インプラント不具合・インプラント周囲炎・スクリュー固定とは?

V. インプラントの不具合(1) 技術的合併症のはなし
 ~上部構造の破損とその対応

インプラントが将来的に不具合を起こすとしたら、どんなことが考えられますか?
インプラント治療が一旦終了した後に起こる不具合としては、大きく二つに分けられます。 一つはインプラントやその上に装着した歯冠に起こる機械的な破損。 もう一つは、インプラントを支えている骨や粘膜など身体に起こる炎症です。(表2
技術的合併症
インプラント(アバットメント)のスクリューのゆるみ
インプラント体または上部構造(歯冠部)の破折
生物学的合併症
インプラント周囲疾患(インプラントの歯周病)
2 インプラントに起こりうる不具合

機械的な破損というと、具体的にはどんなことですか?
セラミッククラウンが欠けてしまったり、歯冠部を固定しているネジが緩んでしまうくことがあります。 お口の中は、常に湿っていて湿度も高く、食べ物や飲み物による温度変化(460)も大きいです。 かつ自分の体重くらいの力がかかるという、材料にとってはとても過酷な環境下に晒されています。 ですので、時には材料が破損する場合もあります。

なるほど。口の中は想像以上に大変な環境なんですね。
くいしばり歯ぎしりのような癖がある場合は、特に注意が必要です。 想定している以上にインプラントに負荷がかかり、インプラントそのものが折れてしまうことがあります。


上部構造が壊れてしまった場合はどうするのですか?

インプラントも自分の歯も、クラウン(上部構造)をセメントという接着材で装着している場合は、壊して外すので、新たに上部構造を作製することになります。

しかし、インプラントで装着する歯(上部構造)は、スクリュー固定といって、専用の小さいネジを使って取り外しができるように作製することもできます。もちろん普段取り外しはしないのですが、歯科医院でメンテナンスを行なうときや、クラウンが欠けたり壊れてしまったときに、外して修理できたりもします。多数の歯を装着する場合は、それぞれのクラウンが破損するリスクがありますし、大きな装置になると、お手入れが難しいこともあります。ですので、将来的なメンテナンスや修理のために、取り外し可能な「スクリュー固定式」をおすすめすることがあります。


治療した部分を長持ちさせるためには、どうしたらいいのですか?
残念ながら、一生涯という長い期間を維持できる治療はなかなか実現できません。 ヒトの長い寿命を全うできるのは、それだけ人間の体という生体組織が巧妙に出来ているためです。 生体組織は環境に応じて常に変化し順応しますが、歯科材料で治療した部分は変化できません。
つまりお口の中の状態は、時間とともに変化します。 それは虫歯や歯周病がない健康な状態だったとしても歯並びが少しずれてきたり、歯がすり減ったりして、噛み合わせも変化します。 小さい変化ですが、そのまま放置すると治療した部分に負担がかかってくる可能性があります。 治療した部分は自然には変化に対応できないからです。
そこで生涯にわたって安定した口腔環境を維持するためには、定期的なメインテナンスを行い 最小限の範囲で修正や追加治療を行っていくことが理想です。 将来の再治療が行いやすいように考慮した治療が大切だと思います。

治療方法
スクリュー固定式上部構造
利点
上部構造(歯冠部分)を歯科医院にて取り外しができるので、メンテナンス・修理が容易になります。
欠点
アクセスホール(ネジ穴)部分が歯冠部に開きますので、前歯の一部など見た目の問題が生じることがあります。
費用について
スクリュー固定式加算 1歯 ¥30,000 (税別)

例)2本のインプラントと3歯分の上部構造の場合
インプラント埋入手術:¥200,000 x2
上部構造:¥150,000 x2 ¥100,000 x1(ポンティック部分)
スクリュー固定加算(スクリュー固定用パーツ)2箇所
¥30,000 x2箇所





V. インプラントの不具合(2) 生物学的合併症のはなし
 ~インプラント周囲疾患(周囲炎)について

もう一つの不具合にある、インプラント周囲疾患というものは、どういう病気なのですか?
インプラントの歯周病と考えてください。インプラントはではないので、周病ではなくインプラント周囲疾患と呼ばれます。 粘膜(歯肉)の炎症をおこす、「インプラント周囲粘膜炎」(=歯肉炎に相当)と周囲の粘膜(歯肉)や骨組織に破壊 を伴って炎症が及んでいく「インプラント周囲炎」(=歯周炎に相当)に分類されます。

インプラントでも自分の歯でも、支えになっている骨に病気が起こるのは一緒なんですね。 原因はなんでしょうか?
歯周病と同様に、細菌感染異常な咬合力によって引き起こされると考えられています。 もともと重度な歯周病に罹患していた場合、発症率が高いとの報告もあります。 インプラント治療前であれば、徹底した歯周病治療が重要です。 また喫煙や治療を受けていない糖尿病では、 増悪することもありますので、禁煙外来や内科の先生の診察をお勧めします。

治療はどのように行うのですか?

治療は歯周病治療に準じて行われますが、天然歯とインプラントの構造の違いから、 インプラントでは炎症の進行が早いため、進行したインプラント周囲炎の治療は難しいケースが多いです。 ですから、早期に発見して、初期の段階での治療をするのが最も効果的です。 インプラント周囲疾患が進行してしまった場合、病変進行に伴い、外科的処置を行い改善を試みます。 (図11残念ながら極端に病変が拡大してしまったものはインプラントを抜去することもあります。

11 インプラント周囲疾患(Peri-implant disease)


せっかく治療をしても、またインプラントも失うことがあるんですね。
インプラント治療後で、最も重要なことは定期的に専門的なメンテナンスを受けていくことです。 少なくとも6ヶ月に一度は、検診をうけてください。軽度のインプラント周囲疾患であれば、改善が 比較的容易だからです。大切なことなので繰り返しますが、メンテナンスは必ず受けましょう。
天然歯
歯肉炎
歯周炎
インプラント
インプラント周囲粘膜炎
インプラント周囲炎
状態
歯肉(粘膜)に限局した炎症
歯槽骨の破壊を伴う炎症
予後
原因(プラーク)が除去されれば改善する。
初期〜中等度までは原因除去療法で保存可能。重度の炎症に対しては予後不良。

3 歯周病とインプラント周囲疾患の類似点


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執筆者略歴
歯科医師(東北大2002年卒)・歯学博士(東京医科歯科大2006年修了)
公益社団法人日本口腔インプラント学会専門医日本口腔インプラント学会 関東甲信越支部・東京
神奈川歯科大学附属病院口腔インプラントセンター 特任講師